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100匹の信楽焼タヌキと暮らす75歳。骨董コレクター野々村さんから学ぶ地方独居老人スタイル!

飛び出し坊やの取材をしに、東京から3時間かけて滋賀県の新八日市駅にやってきた僕は、工房に行く途中に、風情漂う木造の建物を見かけ立ち寄ってみた。

『野々村表具店』。建物の前には、たばこの看板と滋賀県の名物、信楽焼のたぬきがズラーと並べられている。中にも、大量の骨董品が置いてあり、しばらく僕は商品を眺めながら昭和ノスタルジーに浸っていた。

しばらくすると、奥の居住スペースから白い肌着に腹巻きという昭和オヤジスタイルの店主、野々村さん(75歳)がやってきてお店のことを教えてくれた。

野々村表具店の歴史と現在

野々村表具店は地元で有名な100年以上続く歴史あるお店だ。名前の通り元々は表具屋だったが、3代目店主の野々村さん(75歳)が15年前に自分の好きな骨董品を売り始め、今は信楽焼のたぬきや屏風や置物を販売する骨董屋になっている。今、お店に並べられている骨董品は、月に何度か開催される骨董市で仕入れているという。古い木造建築が建て替えられる際に家にある骨董品を売る人が多く、最近は特に安く仕入れられると野々村さんは嬉しそうに語ってくれた。

野々村さんのルームツアー

野々村さんは、「裏庭にお気に入りの信楽焼たぬきが40匹ほど飾ってあるので是非見てみて」と、急遽裏庭に案内してくれた。生活感漂うリビング、キッチンを抜けると広い裏庭があった。

そこにはたぬきやカエルの置物がたくさん並べられている。これらは、売り物と同じように野々村さんが骨董市で気に入って購入したものだが、特に気に入っているので売らずに飾っているという。「信楽焼たぬきのテーマパークみたいですね!」と言ったら野々村さんは嬉しそうに笑ってくれた。信楽焼のたぬきは、売り物を含めて、現在100匹を超えるという。

野々村さんの最高の楽しみは、この裏庭にあるベンチに腰掛け、日本酒を飲みながらたぬきを眺める時間だという。滋賀の大自然を感じられる裏庭で、好きなものに囲まれながらお酒を嗜むなんて、なんて贅沢な時間だろう!

裏庭だけじゃなくて縁側から見える中庭にもお気に入りのたぬきがあると、今度は先ほど通ったリビングに戻り中庭を見せてもらった。

野々村さんと自慢のたぬきコレクション

そして、最後に2階にある客間も案内していただいた。客間には、1階のものよりもちょっとお高めの骨董品が上品に飾られていた。毛皮の座布団がすごくふかふかで何時間でもいれそうだった。

野々村さんから学ぶ地方独居老人スタイル

東京都の大学に進学した僕は、都内の大企業に就職して都内に家を買い、高い車を買ったら勝ち組みたいな、なんとなくそんな常識が頭にこびりついて、そんな常識にとらわれながら生きてきたと思う。僕の周りにいる人は大体都内で就職しているし、自分の周りを見てもそんな常識の中で生きている人が多い。何より、普段目にするテレビとかSNSとか、雑誌とかで発信されている情報がそんな常識をつくってるな、と思う。そんな中でこうやって地方に行くと、自分の常識の外で生きている人に出会えるから面白い。旅に出ると、テレビやSNSで流れてくる虚像の外側に広がる広大なリアリティに気づくことができるんだと実感できた。日本語の通じる外国に来たみたいな気分だけど、こんな暮らしもあるのかと発見があるし、自分にはこっちの暮らしの方があってるんじゃないかと思えてくる。もちろん、地方暮らしは地方暮らしで苦労が多いだろうけど、野々村さんのように「自分で幸せを完結できる人」には向いているだろう。そうじゃない人はきっと寂しくなってSNSに没頭し始めたり、あまり良くない方向に進んでしまうと思うけど。笑

地方移住ってなかなか勇気が出ない。知らない土地に行くのは怖いし、実家を離れると不便だろうし、友達と会えなくなるのは寂しいだろうとか考えて。でも日々の生活を幸せにする選択肢として、地方移住っていう選択肢は持っていていいかもしれないと思った。たまに旅に出かけて自分に合った土地をなんとなく探していきたい。

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えこだりょう

えこだりょう

編集者 / ライター

人々の生活、衣食住に興味があります。 最近では主に職人さんとその手仕事(アナログ的な技法)を取材。 その他にも商店街・ピンク映画館・グッとくる看板・居酒屋のトイレ・シニアのファッション・宗教施設グルメ・入りにくい店などを追っています。 あと、江古田に住んでます。

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