『店主の趣味や個性が反映された居酒屋のトイレ、それは日本で一番多く、一番小さく、ちょっとだけ臭いミュージアム。』
飲食店の表の顔ともいえる店内とは対照的に、トイレは店主の隠れた趣味と個性が凝縮された秘密の空間なのだ。
そこは単なる手洗い場ではない。むしろ小さな美術館か、芸術家のアトリエのようなものだ。店主が独自の感性を存分に発揮し、自らの嗜好や愛着を色濃く反映させた、一種の個展空間と呼ぶにふさわしい。
阪神タイガースグッズの殿堂や相田みつをの名言ギャラリー、店主お手製のダジャレの張り紙、お客さんとの対話の痕跡が残るメモ帳トイレなど、時に豪華で時に質素、店内とはまったく異なる世界がそこにはある。
本連載では、そんな居酒屋のトイレ空間を探訪する。独創性と個性に富んだ数々の芸術的トイレに出会い、店主の奥深い想いに触れていく。変わり種から感動作まで、多種多様なトイレアートの世界を案内しよう。
相田よつお登場!店主の創作ポエムギャラリー。
記念すべき第1つ目のトイレは、東京・練馬にある居酒屋『あきば』。商店街から少し離れた住宅街の路地にある知る人ぞ知る名店。
過去にはモヤさまにも出たことがあるという店主(通称:あきばちゃん)の軽快なトークが人気を呼び連日多くの常連客で賑わう。また、創作料理も多く、メニューも高頻度で更新されるので何度も訪れたくなる。だがこのお店、あきばちゃんが創作するのは料理だけではない。トイレには、あきばちゃんが書いた創作ポエムが大量に飾られているのだ。
作者欄には「あいだよつお」や「ナインシュタイン」と書かれているが、これはあきばちゃんが相田みつおとアインシュタインをもじったもの。それ以外にもあきばちゃんがグッときた名言や新聞の投書欄の切り抜きが壁一面に飾られていた。トイレというより名言ギャラリー。私がこのお店を訪れたとき、精神的に落ち込んでいてお酒が入っていたのもあり、あきばちゃんのポエムで不覚にも泣きそうになってしまった。また余談だが、このトイレを見たことが『居酒屋のトイレ』を探訪しようと決めたきっかけになった。
料理、お酒も安くて美味しいのでぜひ訪れてみてください。
ではまた次回のIZAKAYA TOILETで!
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