『店主の趣味や個性が反映された居酒屋のトイレ。それは日本で一番多く、一番小さく、ちょっとだけ臭いミュージアム。』
飲食店の表の顔ともいえる店内とは対照的に、トイレは店主の隠れた趣味と個性が凝縮された秘密の空間なのだ。
そこは単なる手洗い場ではない。むしろ小さな美術館か、芸術家のアトリエのようなものだ。店主が独自の感性を存分に発揮し、自らの嗜好や愛着を色濃く反映させた、一種の個展空間と呼ぶにふさわしい。
阪神タイガースグッズの殿堂や相田みつをの名言ギャラリー、店主お手製のダジャレの張り紙、お客さんとの対話の痕跡が残るメモ帳トイレなど、時に豪華で時に質素、店内とはまったく異なる世界がそこにはある。
本連載では、そんな居酒屋のトイレ空間を探訪する。独創性と個性に富んだ数々の芸術的トイレに出会い、店主の奥深い想いに触れていく。変わり種から感動作まで、多種多様なトイレアートの世界を案内しよう。
芸術は爆発だ!90年代日本と岡本太郎をイメージした芸術トイレ。
今回紹介するのは、東京のおしゃれタウン自由が丘にある居酒屋『みつばち』。居酒屋の定番メニューはもちろん、つい頼みたくなる創作メニューも豊富なこの居酒屋はいつも混雑。金土日は予約しないとまず入れない。ビルの2階にあって、一見居酒屋があるってわかりにくいのにいつも大盛況。内装も素晴らしく、打ち抜きコンクリートの現代的な建物に昭和的な懐かしさを感じる温かみのある店内装飾が特徴だ。
そしてもちろん、トイレも特徴的!トイレの内装は特に凝っていて年に一度、内装のテーマを変えるらしい。今回は”90年代の日本”をテーマにしたトイレ。
トイレには「芸術は爆発だ!」と叫びたくなるような昭和日本的なインテリアが並ぶ。70年代を思い出させる「太陽の塔」の他に、ブラウン管やラジオ、サッポロラガービールの看板など90年代日本を感じるインテリアが広がる。広々としたトイレに敷き詰められた90年代日本。98年生まれの筆者は「なんだってここはこんなに懐かしいんだ!」とオトナ帝国の野原ひろし的な叫びが脳内に浮かび、ここから離れられなくなりそうだった。色鮮やかな広告もなぜだか懐かしい雰囲気を助長してくれている。
清潔ながら昔ながらのトイレを作ってくれている「みつばち」さんのトイレ。居酒屋トイレ好きは、わざわざ足を運ぶべきトイレだと思う。90年代日本の次のテーマはなんだろう。2000年代の日本かな。気さくな店主の遊び心を定期的に追っていきたい。
では、次のIZAKAYA TOILETでお会いしましょう。
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