住宅街の片隅で、ポストから溢れ出すチラシが、思いがけない美を纏う。それは生け花というより「生け紙」とでも呼ぶべき住宅街のアート作品だ。
ポストから叫びのように飛び出す広告の束は、「居住者の怠惰」と「何人ものチラシ配布者の粗雑な仕事ぶり」が生み出した共同作品ともいえる。その姿は、単なる視覚的な面白さを超えて、消費社会全体を風刺する「現象」としておもしろい。
一方で、駅や街角の新聞・雑誌棚に整然と並べられた紙媒体もまた、別種の美しさを放つ。その規則性は都市の秩序を象徴し、不規則なポストの光景と対をなす都市の芸術作品だ。
しかし、デジタル化の波に押され、こうした紙の風景は徐々に姿を消しつつある。不規則と規則、無秩序と秩序が織りなす、この束の間のアートを目に焼き付ける時間は、もはやわずかしか残されていないのかもしれない。
これからも「ポストアート」を見かけたら撮り溜めて連載にしていきたい。(もちろん個人情報はモザイクで消して)なんなら、この分野の假屋崎省吾さんになりたい。
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