冬の終わりを感じさせる3/1(土)の午後、中野の住宅街をトコトコ歩いて向かったのは、昭和の面影を残す床屋さん『理容ふじ』。のれんをくぐると、ほんのりと漂うパーマ液の匂いと、優しく迎えてくれる佐藤さんご夫婦の笑顔が出迎えてくれた。

今回の目的は、最近気になっていた「デザインパーマ」。美容室でパーマをかけたことはあったが、人生に一度は理容室でパーマをあてたいという気持ちがあり、店前に堂々と「デザインパーマ」という看板が掲げられた「理容ふじ」でパーマをあてることにした。
筑波から富士へ――名前に込めた覚悟

ご主人の佐藤さんは、もともと王子に存在した人気理容店「理容つくば」で働いており、多くのお客さんを抱える繁盛店で腕を磨いていた。当時の王子には「流し」という飲み屋街で歌を歌い日銭を稼ぐ人が多くおり、その流しが、飲み屋街で歌を歌う前に髪を整えに多く来店していたという。
佐藤さんは、王子で修行を積んだ後、独立を決意。王子のお店よりも繁盛するお店を作りたいという想いから、つくば山よりも高く雄大な“富士山”にあやかり、店名を『理容ふじ』とした。
ちなみに王子の前は、原宿の竹下通り近くでも修行していた経験もあり、当時は日本人初のボクシング世界チャンピオンになった白井義男氏が常連だったとか。「短く頼むよ〜!」と陽気に入店し、カット後には一緒にご飯へ。「今日はいいか、自由に食べよう」と白井氏が豪快に食べすぎて、減量に失敗したという笑い話を楽しそうに話してくれた。
奥様との出会いと、二人三脚の現在

一方、奥様もまた理容の世界で武者修行を積んできた人。通信制の学校を一年で卒業し、北千住の店舗で経験を積んだのち、王子でご主人と出会う。22、23歳のときにご主人とともに独立し、現在の店舗を購入。以来、二人三脚で店を営んできた。
理容室にありがちな“話しかけられるストレス”とは無縁の空間。ふとした会話はあるものの、基本的には居心地のいい静けさが漂っていて、初めてでも肩の力が抜ける。
地域に根ざし、世界に開かれた床屋
今でも1,300円という価格でカットだけのメニューも用意し、シンプルに「髪を整えたい」というニーズにも応えている。親に仕送りをしないといけないというブラジル人留学生が、このカットを求めよく訪れるという。
また、遠く栃木や長野から通ってくる常連もいるというから驚きだ。



その価格を実現できているのは「持ち家」だからこそ。家賃に追われないから、適正な価格で、手を抜かず、丁寧なサービスが続けられる。
パンチパーマの手前、“半チパーマ”誕生
さて、本題のデザインパーマ。男性には一番細いロットを使用し、前髪から襟足まで隙間なく丁寧に巻いていく。かける時間も、ほどけないようにとじっくり。仕上がりは、パンチパーマの一歩手前といった、強めのカール感。その名も“半チパーマ”。




これがまたクセになる絶妙な仕上がり。朝のセットもラクだし、なにより「ちょっと違う」自分になれる喜びがある。


しかも、これで6,000円(税込・カット+顔剃り込)。美容室なら倍近くする価格だが、『理容ふじ』ではこの値段でやってくれる。つけるロットの数も多く、丁寧に仕上げてくれるこのクオリティでこの価格……驚きしかない。


今日も、ふじのように。
古き良き床屋の趣きと、職人としての確かな腕、そして何よりも、優しくて飾らないご夫婦の人柄に、また来たくなる『理容ふじ』。

さあ、次はどんな素敵な出会いがあるだろう。
また髪が伸びた頃に、トコトコ行こう。チョキチョキされに。
店舗情報|理容ふじ
〒164-0011 東京都中野区中央4丁目16−12
Googleマップ → 理容ふじ
カット:1,300円〜
デザインパーマ(カット・顔剃り込み):6,000円(税込)
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